浄土真宗 正信寺
正信寺
Tweet

住職のこぼれ話(22)

私は、浄土真宗の僧侶ですが、禅宗の駒澤大学を卒業しました。商経学部に学び、アルバイトに明け暮れ、宗教とは縁のないように勉学しておりましたが、結果的には仕事の上でも禅宗と大きなかかわりを持ち、駒澤大学の縁に支えられてきた経験があります。その不思議な縁を、紹介したいと思います。

永平寺 1

敗戦後は宗教への否定的な感じ

私は駒澤大学に学びましたが、仏教学部の授業は受けていませんでした。商経学部の4年生になる時、後に本山永平寺貫首になられた学生課長から呼び出しがあり、「ここは仏教大学ですから、商経学部生でも仏教は必修です。最低4単位習得しない限り、卒業させません。」というお叱りを受け、慌てて仏教原論4単位を学習することになりました。当時の私は、禅については無知で、座禅もしたことがありませんでした。

駒沢大学に在学していた昭和26年当時は、敗戦からまだ時間があまり経っていませんでしたから、敗戦の原因は、日本の古い文化にもあるという思い込みが私にはありました。宗教についても批判や拒否的な感じを持っていました。そのため禅寮の寮生活の中で、掃除と食事を除いて座禅にも参加しないでアルバイトに精を出していました。

産経新聞に入社

就職難の中、公募で産経新聞の経理部に入社しました。労働組合を経験したのち、人事部勤務となり、その数年後に教育訓練課長を拝命しました。

「新聞社の社員教育」とは何を教育すればよいのか、解りませんでしたので、いろいろ検討した結果、まず、日本生産性本部などで行っている各種の通信教育の講座を会社の負担で始めました。

しかし、新入社員教育というのは、採用した人材を、いかにして会社の風土に合った人材に育てるかが課せられた使命です。会社の仕組み、組織の機能や役割などについて、講義や現場を見学して勉強することにしました。

約一週間の日程の予定表をつくり、各部署の長に講師をお願いし、寝食を共にする合宿形式で行う事にしました。合宿場所は、交通手段、黒板などの設備や就寝場所、新入社員の親睦を深める事などを検討した結果、大きな寺院の設備を利用して行なってはどうかという結論になりました。産経新聞の本社がある大手町からも近いので永平寺東京別院長谷寺(ちょうこくじ)が適しているということになりました。たまたま、私が駒沢大学の出身だったので、長谷寺に依頼する役割を仰せつかりました。

新入社員教育と禅宗

まず、学生時代のアルバイトの時にお世話になった、駒沢女子短大の初代校長である小川弘貫先生(1905年、佐賀県鹿島市生まれ)を訪ね、新入社員教育のために長谷寺をお借りしたいと説明しました。すると、丹羽廉芳師を紹介してくださいました。丹羽廉芳師は永平寺東京別院では一番位が高い「監院」で、東京帝国大学を卒業され、浄土真宗の大谷大学でも学ばれました。

小川弘貫先生からの事前連絡があったのでしょう、丹羽廉芳師は寺院内の監院専用の個室である床の間がついた畳敷の部屋に私を案内され、冬でしたので炬燵に入るよう指示されました。私は産経新聞の新入社員の教育訓練計画と講習内容を説明し、先生には設備利用のほか、教育や新入社員の座禅実習など、そして先生の仏法法話もお願いしました。ありがたいことに、先生には、万事承諾していただくことができました。丹羽廉芳師による東京の永平寺別院での新入社員教育訓練は、おかげさまで私の初めての座禅を含めて、順調に終了しました。

無縁と有縁

大学時代には、自ら避けていた禅宗に、社会人となってから大いに助けられました。

不思議な仏縁を感じました。さらに、永平寺への紹介状もいただきましたが、それは、次のこぼれ話永平寺 2で紹介します。